次期宇宙基本計画(案)に対するパブリックコメントを提出
次期宇宙基本計画(案)に対するパブリックコメントを、当社Space Medical Acceleratorとして提出しました。
以下、原文です。
▪️宇宙基本政策-SMA-パブリックコメント案
2. 目的と将来像
(3)宇宙科学・探査における新たな知と産業の創造
「地球低軌道における産業振興」に関して、ISSおよび後継の民間商用ステーションでのタンパク質結晶生成・マウス・細胞培養実験等による創薬・加齢医学・再生医学研究、付随する実験システムや機器開発等の医療産業に、国として強力に後押しする方針を早急に打ち出すべきと考える。
昨今の民間企業の宇宙市場参入において、輸送系や衛星データ分野の活況に対し医療分野は産業として未成熟市場である。一方で、微小重力での創薬・加齢医学・再生医学等の研究は、地上の難病や希少疾患・高齢者医療など多くの医学課題を解決し得る可能性を持つ。2020年Nature誌の調査ではこれまでISSでは3000近くの科学実験が実施され、うち1250件(約40%)が生命科学実験である。これらの成果を早期に地上社会に還元し、医療分野でのわが国のプレゼンス獲得のため、官民一体で低軌道での医学研究や医療技術開発を成長産業としていく戦略が必要である。
医薬品開発は巨額の研究開発費を要する一方、全世界で131兆円規模の巨大市場(2019年時点)であり、1剤の開発が多くの患者を救うことから各国がしのぎを削っている。しかし、わが国は医薬品やワクチン開発などの分野において、欧米諸国と比較して資金力や研究開発力に劣後しており、コロナ禍においても必要なワクチンの多くを輸入に頼ることになった。医療においては将来確実に必要な分野に資金投入し、民間の参入と競争を促し市場成長させる政策が必要である。宇宙開発の中で、医療分野は地上で人々のメリットに繋がる事から先端研究のための予算投入も社会的理解が得やすいと考える。またJAXAは各国宇宙機関の中でISSにおける医学系研究の割合や水準がトップクラスであり、日本の宇宙開発で強みとすべき分野である。
これらは3.宇宙政策の推進に当たっての基本的なスタンス(4)国際競争力を持つ企業の戦略的育成・支援の趣旨とも一致する。
デジタル分野でインターネットが登場した際に国として産業化の後押しが必要であったように、宇宙産業の黎明期である今、低軌道での医療産業に対する助成拡張やアンカーテナンシー実施などの政策を掲げる事で、難病や加齢の病態解明および治療法開発といった世界的課題の解決において日本が世界をリードできる可能性が十分にあると考える。